昨日のランチは、上野の聚楽台で五目焼きそばを食べた。聚楽台は上野駅の西側、西郷さんの下にある上野デパートの2階にある。西郷さんの立っているところ(上野のお山)は、もともとは岬であり、上野デパートは、その岬に張り付くように、つまりその昔は海だったところに建っている。
聚楽台は「じゅらく」の本拠地のようなレストランで、浅草にすむあたしにも馴染み深い店であり(浅草にも店がある)、浅草でファミリーレストランといえば「じゅらく」のことなのであり、上野でファミリーレストランといっても「じゅらく」のことなのである。
その上、あたしが学生時代を過ごした福島には、飯坂温泉にホテル聚楽があって、その関係なのか、福島駅に聚楽のレストランがあったのだ。そこであたしは五目焼きそばばかりを食べていた。世の中にこんなうまいものがあるのか、と(その当時は)思っていたのだ。
そんな因縁浅からぬ「じゅらく」の中でも、「聚楽台」は飛びぬけた存在であって、旧日本海軍でいえば戦艦大和である。それはまさに昭和の大食堂だ。
その様相は、たとえばマルカンデパートの展望大食堂を思わせもするが、聚楽台は、椅子席よりも座敷が広く、その座敷は桃山調で、千と千尋に出てくる湯屋の宴会場のごときなのである。
そこに、いかにも上野的に様々な人々が集い、酒を飲み、飯を食っている。それは一種壮観かつ浅草と地続きの安心感に溢れている。昨日あたしの隣におられた老夫婦と孫と思われし方々には南部訛りがあった。南部の訛りを聞いて上野を確認するのである。
聚楽台は今年で50周年だ。つまりあたしと同い年であるのは、浅草寺の本堂と一緒なのだが、しかし50年を節目に、来月の21日で営業をいったん終えてしまうのである。それは建物の立替を行うからで、次にお目にかかれるのは2010年の予定とのこと。
それで昭和の遺物はまたひとつ消えてしまう。あたしはそれを寂しがる心象は持ち合わせてはいるが、たとえ多くの人たちが「寂しい」といったとろこで、資本の理論からみれば、こんな非効率な建物が、上野の一等地に建っているほうが"おかしい"ということなのだろう。
その"おかしさ"を体を張って表現していた、もしくは資本の理論に体を張って逆らっていたのがこの建物だったのだのだろうが、もう無理、ってことなのか。あたしにできることといえば、こうして古いものを記録にとどめておくことと、次に西郷さんの下に(上かもしれない)現れる、新しい建物の姿を見届けようとすることぐらいなのである。
聚楽台 (西洋各国料理(その他) / 上野)
★★★☆☆ 3.0
台東区上野公園1-57
03-3831-8106
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