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中川昭一と横山やすし。

天才伝説 横山やすし

天才伝説 横山やすし (文春文庫)

小林信彦(著)
2001年1月10日
文芸春秋
476円+税


午前6時30分起床。浅草は晴れ。酒で失態をやらかすというのは、あたし的には日常のようなもので、例えばあのTVは、あたしがどんなに高尚な言葉で言い訳をしても、親戚一同には不評であった。なにか政治経済について語っているのかと思えば、ただの酔っぱらいじゃねぇか、バカヤローなのである。

しかしあたしが酒を飲んでTVに出ても、世間的にはなんの問題もない。むしろあの場では、シラフなあたしが何を言っても興醒めなのである。だからあれはあれでいい(たぶん)。

中川昭一さんの酔っぱらい会見はBBCのニュース経由で見た(つまり間違いなく世界に配信されていた)。あのロレツの廻らない記者会見を見ながら、あたしはゲラゲラ笑っていた。酷い芸ではあるが面白い。

しかし彼は芸人ではなく政治家である。大臣である。TV村はこの人を許さないだろうなと思った。案の定、世間(というかマスコミ)的に辞任に追い込まれた。

酒のせいでTV村的に村八分になった人といえば、横山やすしさんがいる。横山やすしさんは(あたしの中では)、阪神タイガースと並ぶ大阪の地場産品だった。大阪の格好いいオヤジというのはアレじゃなくちゃいけないと勝手に思っていた。

漫才はうまい。天才的にうまい。しかし哀しさ(甘え)が表面に出てしまう人だった。寂しい人なんだなと思った。それで呑めもしない酒を飲んでいた。そして酒を飲んでTVに出ては批判を受け、番組をすっぽかしては降板、傷害事件を起こしては謹慎になり、酒飲み運転で人身事故を起こし吉本を解雇され、あげくに何ものかにボコボコにされて失語症、そしてアルコール性肝硬変で亡くなった。享年51歳、その晩年はとてつもなく哀しい人だった。

中川昭一さんが哀しい人なのかどうかは知らない。なぜなら今回の騒動があるまで、人間的にぜんぜん興味のない人だったからで、北海道のダンディな二世議員ぐらいの印象か。

しかしあたしは今回の件で、中川昭一さんが気になる人になってしまった。酒飲んでました、すみません。と正直に誤らないところがやっさん的だなと思ったけれど、彼の人生がやっさん的になることはないだろう(あたしはそうなって欲しいと勝手に思っていたりするが)。たぶん周囲からは二度と酒は飲むなと叱られているに違いない。

けれど酒飲みは、叱られれば叱られるほどまた酒に向かうのである。止められるならとっくの昔にやめてます。そして嬉しくても、哀しくても、嬉しくなくても、哀しくなくても飲んでいるのは、酔っ払っているあたしが本当の自分※1に一番近いからであって(たぶん)、それが究極の〈欲望〉だからだ。そこに戻らなざるを得ない「かなしい」が人間なんだと(あたしは)思う。

※注記

  1. 鏡像段階 「ボロメオの結び目(ジャック・ラカン)」 参照。

Comments [3]

No.1

十勝に住んでいる人間はあれを見て悲しかったなあ・・・
というか物理的に病気じゃないかなあとものすごく心配にもなったし、たとえ不治の病になっても文句を言われる立場なんだからちゃんとしてほしかったなあ・・・。

十勝には十勝毎日というローカル紙があるのですが、辞任会見で一面トップ。ほとんど死亡したんでないか?!と思わせるくらいのおっきな扱いでした。

No.2

中川昭一先生よりも御尊父中川一郎先生の方が豪快さ繊細さ酒癖は横山やすし師匠に近い。全盛期もかぶるし。中川一郎先生がご存命だったら横山やすし師匠は自民党(青嵐会)から立候補していたかも?

No.3

ブログ主さん、こんばんは。記者会見の様子を見て横山やすしに例えるとは面白い視点だなぁと思いました。
私は、あの記者会見が「オフレコ協定」に属する場だったとみています。ですから、中川前大臣が意識朦朧となっても周りは誰も慌てなかったし、見ていた記者も誰一人として質問をしなかったのも当然です。本来ニュースにならない場だったから、あの後バチカン観光に行ったのです。オフレコ協定という「仁義」を破ったのはどこなんでしょうねぇ。
「酩酊疑惑」については、中川大臣が超過密日程をこなし、件の記者会見がG7閉会後に開かれていたことを思えば、昼に飲んだワインは疲れきった脳と体を奮い起こすための「気付け」程度のものであり、疲れと薬の眠気のせいで猛烈な眠気に襲われたと見るのが自然ではないでしょうか。どの記事を見ても「中川議員はクロ」と前提した上で記事を書いていますが、「酩酊状態」だったことを裏付ける証言を明確に書いた記事は一切ありません。「推定無罪」の原則を破ることはメディアとして「あるまじき行為」だと思うのですが。
結局のところ、「麻生おろし」を目的に一部マスコミが仕掛けたペテンに全国民(もちろん私も)がコロッと騙され、「中川続投は無理」とみた一部議員が裏で暗躍した結果、彼は梯子を外されたということなのではないかと思います。
ブログ主さんは中川氏のことを余り知らないようですが、一度ウィキペディアでも覗いてみてはいかがでしょう。個人的にはなかなか主義主張がはっきりしていて、頑張っている方だと思うのですが。

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