桃知商店よりのお知らせ

新型インフルエンザは全方位検索する。

SIRモデル

SIRモデル
【引用】ダンカン・ワッツ:『スモールワールド・ネットワーク』:p208

  • S:susceptible 伝染病に感染しておらず、したがってこれから感染の可能性を有するもの
  • I:infectious 既に感染し、しかも他者に伝染病を感染させうるもの
  • R:removed 回復したもの、抵抗力を持ったもの、あるいは死に至ったもの

「交通や集合の規制も視野に入れる」と厚労省

……流行を食い止めるためには、交通の規制と集会の自粛が有効のようだ。日本経済新聞08年7月4日の記事によれば、三菱総合研究所と千葉大学、国立感染症研究所などのシミュレーション調査で、新型の発生時に「学校閉鎖」「鉄道運休」「流行前のワクチン接種」をすべて実施した場合、感染者数は何もしなかった場合の約3分の1になるなど、被害が大幅に軽減できる可能性があることがわかったのだという。※1

私はまだS(susceptible 伝染病に感染しておらず、したがってこれから感染の可能性を有するもの)であるけれど、昨年7月の記事がなんだか現実味を帯びてきた今日この頃だなと思う。 クラスター化された小さな世界

日本が島国である特徴を利用し、日本そのものをクラスター化した小さな世界スモールワールドとして(国境で)線引きし、ハブである国外空路をおさえること(水際の検疫)は当たりマエダのクラッカー的な手法であった。

新型インフルエンザ(に限らずウイルス)は全方位検索する。どんな隙間でも探して自己複製してしまうのは自己複製子の性。今国内で増え続けている(というか発見されている) I がその証明ってことだろう。※2

ウイルスの複製率が「1」※3であるならば、Sのネットワークを遮断しない限り感染は拡大してしまう。

そしてウイルスの繁殖をスケールフリーネットワーク(と呼べるならだけれども)に乗せないこと。

国内でいえばスケールフリー性をもつのは、クラスター間を結んでいるネットワーク網(新幹線や空路国内線)ってことになるか。それらは大きなハブをもつネットワークであり、クラスター間を結ぶことでスケールフリー化に寄与している。

伝染病の成長期

現在の手法は、国内を小さなクラスターに分割し、I の多い局所(ハブ)を限定し、そのクラスターと外とのつながりを切断するというランダムネットワーク戦略。

であるなら「学校閉鎖」「鉄道運休」は当たり前の戦略だけれども、問題はクラスター間を結んでいるより大きなネットワーク網(新幹線や空路国内線)の切断(中断)はできるのだろうかということ。

勿論、全方位検索のウイルスがそのネットワーク(ハブ、ノード)を見逃すはずもなく、(インターネットなんか関係もないのだが)インターネットを介した感染率1のミームのように、新型インフルエンザのスケールフリー的繁殖は始まってしまうのだろう。

つまり経済効率性の高い大都市ほど感染は爆発的に広まりやすい。※4

だとすれば思い切って1週間ほどすべての経済活動を止めてしまう戦略はありかという問題。

だからといって新幹線や国内線をはじめとするネットワーク網を止めてしまうというのも篦棒な戦略に思えてしまうのは、まだ東京では I が出ていない(というか発見されていない)こと、国内では死者が出ていないことからのあまい心象なのか。

結局、うがいにマスクに手洗いに余計な外出は避けるといった個人的な予防策しかないのかねと考えるに至って、午前7時起床。浅草は晴れ。

※注記

  1. J-CASTニュース : 「新型インフルエンザ」発生 電車止まり、学校休校という「悪夢」
  2. 気になるニュース
    『17日に感染が確認された大阪府八尾市の小学6年女児(11)は、ほかの感染者との接触が判明せず、居住地も離れていて渡航歴もない特異なケース。八尾市によると女児の通う小学校では別の4年生の児童3人がインフルエンザ症状で欠席。同市周辺ですでに感染が起きている可能性もあり、保健所が疫学調査する。』 from  感染拡大か、検査続く 新型インフル、相次ぐ症状  - 47NEWS(よんななニュース)
  3. 感染率(複製率):I が平均して何人の I を新たにつくりだせるのか。伝染病が広がるには、複製率は1以上でなくてはならない。
  4. 増田悦佐さんの主張に対する逆説。「街的」の弱点かも。
    『日本経済が世界最強である秘密は何かというと、世界中の先進国でいとばん人口密度の高い大都市圏と、この大都市圏をおおう世界中でいちばん利便性の高い鉄道網を持っていることだ。なぜ諸外国がキャッチアップできないかというと、人濃い密度の高い大都市圏と利便性のあいだにはお互いに相手を高めあう「ポジティブ・フィードバック」の関係があるからだ。(p20) 』 『日本文明・世界最強の秘密』 増田悦佐を読む。 参照

Comment [1]

No.1

風邪ウィルスにはひとつ弱点があるような気がします。
飛沫感染(ときには飛沫核感染)によってしか他の生物に移動できない。
そのために喉や気管支にとりついて「咳・くしゃみ」をうながす。
その経路を遮断すればいい。

つまりマスクです。
いまもテレビで「予防のためにマスクを」なんてアナウンサーがいってますが、
個人の感染予防のためにはあまりマスクは意味がない。
しかしウィルスの移動経路を遮断するには、もしある条件さえ整えば
絶大な効果を発揮する。

ある条件というのは電車や劇場など人の密集するところ、極端には戸外でのマスク着用を法的に義務付けること、
ヘルメットの着用などと同じように全員がそれを実行することです。

これはあらゆる感染拡大対策のなかでもっとも威力を発揮する対策ではないかと思います。
つまり動物はマスクができないが人間はマスクができるということです。
頭の悪い政府の連中がはやくそのことに気づいてもらいたいと願っております。

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