くず餅くず餅


船橋屋のくず餅

午前5時10分起床。浅草は晴れ。「船橋屋 亀戸天神前本店」で「くず餅」を食べた。普通の人なら当たり前の事だが、この人は当たり前が当たり前にできない。勿論、糖尿病患者であるあたしが「餅」という名前の、それも黒蜜ときなこでコーティングされたものを食べるなんて考えられるものではない。しかし、この日は「東京くず餅食」という、和菓子唯一の発酵食品を食べたのだ。

そう、この「くず餅」は発酵している。その原料は「小麦でんぷん」なわけで、その「でんぷん」が450日間も乳酸発酵してこの「くず餅」は生まれれる。なんという時間の蓄積だ。1年と85日経ったこの「くず餅」を食べた。食べるのに30分もかかからない。そう30分の為の450日だ。これは「キアムス」だなと思う。最初は「食べられない」。その食べられないものを「食べられる」にする。それもほとんどの仕事を自然が行っている。

時間のかかる、しかし、立派な仕事としての「キアムス」。同時にこれは(あたしにとって)「ハレ」のたべものだ。

(あたしは)「船橋屋」そのものを何度も見てきた。亀戸からバスに乗る度にだ。しかし「くず餅」は初めて食べた。この歴史のある古臭い建物の中で食べる、やや歯ごたえのある、ほんのり甘い「くず餅」は、日常(「ケ」)のたべものではないな、とうなずく。この不思議なたべものが東京の東側でしっかり生きていること自体が「ハレ」なのだ。

船橋屋

船橋屋 亀戸天神前本店
東京都江東区亀戸三丁目2-14