IT化のためのふたつの前提

では、ちょっと具体的なはなしに入りましょう。現在、企業ベースの私のコンサルテーションでは次のふたつを当然の前提としています。それは、

  1. ひとり一台のパソコン
  2. イントラネットの導入

です。このふたつの前提は、目的ではなく、あくまでも前提でしかありません。今までの情報化の考え方、つまり「正解の思い込み」では、ひとり一台のパソコン、そしてイントラネットの導入が目的となっていたはずです。しかしこれらはあくまでも前提に過ぎません。

IT化の目的は、自社の「技術のミーム」、それも「消費のミーム」との間でその関係の編集作業ができるようなミームの創造です。残念ながら、ひとり一台のパソコンとイントラネットが導入されただけで、自然発生的にそのような「技術のミーム」が生まれ育つほどIT化はシステマテックではないのです。

IT化におけるパソコンの存在意義

では、これらふたつ前提の必要性についての理解をはじめましょう。まず共通していえることは、IT化におけるパソコン(パーソナル・コンピュータ PC)の存在意義です。それはコンピュータは計算機ではなく、ミームという自己複製子が表出させた、つまりミームが作り出したコミュニケーション・ツールだということです。

IT化において、自らが自由に使えるパソコンがないことは、ミーム・ヴィークルを失うこと、コミュニケーションのツールを失うこと、そして大げさにいえば言葉を失うことに相当します。IT化ではひとり一台のパソコンを準備することは当然のことでしかありません。

建設業は現場が存在するから建設業である

そして、建設業の原理原則である〈建設業は現場が存在するから建設業である〉という大前提に立てば、「中小建設業のIT化」には、現場を含む全社を結ぶネットワークが必要となります。現場をIT化から疎外することは「中小建設業のIT化」では絶対にやってはいけないことです。

現場をIT化の円環に組み込むシステム、それが「イントラネット」なのです。イントラネットはインターネットがそうであるように、これもまた(自社の)ミーム・プールです。このイントラネットを活用した現場も含めた自社のネットワーク化を、私は「現場のIT化」と呼んでいます。