おかしな男 渥美清 おかしな男 渥美清

2000年4月15日
株式会社新潮社

1800円+税

『おかしな男 渥美清』を読む

午前6時30分起床、浅草はくもり。いまさら渥美清がどうした、と云われるだろうが、あたしが好きで見ているTV WOWOWで、特集:山田洋次の世界[男はつらいよ“5月限り”の全49作一挙放送編]をやっているのである。

それは今更騒ぐ必要もないのだが、(あたしは)未収録であった「男はつらいよ」から「寅次郎祇園船」までの27作品を録画していたのだ。そして、本棚にあった小林信彦の『おかしな男 渥美清』を取り出して読んでみたのだ。

この本は2000年9月16日に読書記録があるが、かれこれ13年ぶりに読んだ、ということになる。そこにある当時の記録は、今読むとさすがになにを書いているのかが分からないのだが、以下に書き出してみる。

さぁて、渥美清でありますが、私は国民的映画(らしい)「男はつらいよ」の中の「寅さん」を好んで見ることはなかったのです。
沢山見ているはずなんですが、話の筋の記憶が残っているものはないですねぇ。
私の記憶にある渥美清はですね、私がまだ子供のころに見た(というよりも再放送か、後から一部をビデオで見たのか)TV版の「男はつらいよ」の渥美清なんでありまして、私の彼に対する記憶ははっきり言えばそこで停止したまんまであることに気が付いたのです。本屋でこの本を見た瞬間にですね。
それで、それがなぜなんだかの答えが、この本にはあるんですけれどもね、それを知ったからってどってことはありませんがね、でも私的にはとても重要なことだったのですよ(笑)。
from http://www.momoti.com/myself/self51.htm#00/09/16

今はブルーレイ等と云う記録メディアがあるもんだから、こうして寅さんの最初の作品を好きな時間に見ることができる。そしてそこにいる寅さんは、渥美清よりも田所康雄(渥美清の本名)に近いのかもしれないが、はっきり云ってそういうことはどうでもよかったのだ。だからこの本を読んだことは失敗であったかもしれない。

小林信彦を(たまに)読んできたあたしから云わせてもらえば、こんなにくどく死んでから書いてもらって(渥美清は)嬉しいのだろうかね、と思うが、あたしは「男はつらいよ」の渥美清しかしらないのだし、またそれでいい、と思うのだ。

今どこを探してもいないようなこの俳優が、浅草に居た、ということも知らないし、ましてや百万弗劇場なんてどこにあったのかも知らない。そんなあたしが「男はつらいよ」のファンなのかね、と考えると、一体後なにが必要なのだろうか、と思うのだ。だぶんそれには何もいらないのであるが、ただこうして見続けること、それだけでいい、と思うのだ。