すごいぞ!私鉄王国・関西すごいぞ! 私鉄王国・関西
黒田一樹(箸)1944円 2016年4月22日 140B


すごいぞ!私鉄王国・関西

午前4時30分起床。浅草はくもり。あたしの友人のひとり大迫力くんは、もう大迫くんなどと呼ぶのもはばかれるような立派な大人になったと思うが、その大迫くんが本を贈ってくれたのだ。題して「すごいぞ! 私鉄王国・関西」である。書いた人は黒田一樹さん、つくった会社は140Bである。

なんだ、いつものと同じじゃないか、と思ったあなたは一度本書を読んでみて欲しい。だいたい同じ本など無いのであり、この本は持った感じ、そして表紙からして違う。それは「大阪人の鉄道王国・大阪」(Vol.66-01 2012年1月号)で見て以来の電車が並ぶ快作だ。

それに大迫くんは尼崎の出身なのだが、本書にはこんなテクストがある。『彼の実家は最寄り駅が普通車列車しか止まらない出屋敷で、毎日ジェットカーで高校に通ったという。「ある意味ジェットセッターですよね」と大迫さんは笑った。』(p117)

何だかわからないテクストだろう?これは「阪神電鉄のジェットカー」のはなしなのだが、「阪神電鉄のジェットカー」と書いても、特に東京在住の一般の人達にとっては何がなんだかわからないものなのだ。

当然あたしも分からなかったのだが、そういう意味では、この本の内容は「鉄道オタク」の為の本だ、と云ってもよいだろう。しかし、あたしが「一度本書を読んでみて欲しい」と云うのは、この本の基底の様に流れる「楽しみ」が全体を貫き通しているからなのだ。

そしてその上に行儀良く並べられた各電鉄会社の特徴――阪急は創業者の顔が見える鉄道であり、南海は過剰こそ美学、バロックの凄みであり、阪神は「速い電車」とは何か?であり、近鉄は日本一の鉄道のエキゾチシズムであり、京阪は玄人をも唸らせる、名称のからくり――それらがのっかっている。その上その特徴が花咲いているのである。

そう、このテクストは楽しい、本が楽しいのだ。その楽しいテクストの作者が闘病中だと聞く。なんてことだ、とあたしは思った。願うのは、このような「楽しみ」を発見した人間を、何時までも闘病中のままにしていてはしょうがないだろう、ということである。一日もはやい復活と活躍を期待しよう。