社会的交換から経済的交換を位置づける

さて、ここからは、金魚論から展開した「中小建設業のIT化=市場×IT化」の「市場」という部分の考察を始めますが、その市場についての概観は、すでに今までの考察の中である程度は略画的に描いてきています。

お気づきの方も多いと思いますが、本書の市場を考察するアプローチは、皆さんにとっては、少々風変わりなものであるはずです。それは「社会的交換」をベースに産業化を再構成する考え方をしているからなのですが(これは村上泰輔が「開発主義」の考察で行った方法を援用しています)、この特徴は「マーケット・メカニズム」にだけ依存しているとされる交換行為(つまり売買)を、「経済的交換」として「社会的交換」の特殊ケースとして位置づけているところにあります。つまり経済的交換も、結局は人と人との相互作用であると捉え、私たちの日々の生活から切り離されたものではなく、社会的交換を下敷きにしておこなわれているもの、と考えることを意味しています。このようなアプローチの特徴は、今までの本書の議論ではいたるところにみることができたはずです。

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