第4章 市場 一覧

中小建設業の技術のミーム

さて、ここにみられる公共建設工事の「技術のミーム」は、受注者(中小建設業)が主体となってつくり出したものではなく、発注者によって規定されたものであることに特徴があります。これは、公共工事における技術や技術者を(かつては)発注者が独占していた、過去の残像のためですが、「技術のミーム」の形成が発注者の要求に規定されていることで、中小建設業は「金魚論」の枠組みから開放されることを許されないのです。

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ふたつの技術のミーム

ここまでの理解を基に、私たちはようやく中小建設業における「技術のミーム」を考察することになります。それは、中小建設業では競争力とかコア・コンピタンスを明らかにすることなのですが、ここでは、便宜的に「技術のミーム」をふたつに分けて考えることにします。

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コア・コンピタンス

ここまでの理解を基に、私たちは、ようやく中小建設業における「技術のミーム」と、その「技術のミーム」が形成してきた「消費のミーム」や「ソーシャル・キャピタル」を考察することになります。それは、公共建設市場における中小建設業の競争力とかコア・コンピタンスはなにか、という考察を意味するのですが、ここでは、「コア・コンピタンスってなに」という方々のために少し寄り道をします。

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技術のミーム

さて、私たちはここで、市場を形成する「技術のミーム」と「消費のミーム」というふたつのミーム分類に立ち返ることで、ある産業の持つ「技術のミーム」が「第一種の情報」と「第二種の情報」との束であることが理解できるはずです。

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信頼と安心

本書では、「なんだかよくわからないけれども人を束ねる力を持った情報」を「ソーシャル・キャピタル」だというのです。それは、金子郁容の言葉では、

ミームによって運ばれる感動と人間性に対する信頼感の伝承がコミュニティ・ソリューションの秘密である

となり、村上泰亮の言葉では

社会的交換を成立させているのは、まさに時間と対人関係の両面において「粘っこい」蔓の情報に他ならない。
村上泰亮,1994,p141)

ということです。

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選好基準は複雑である

さて、これからのはなしは、私と親交のある電気工事業の社長さんのはなしです。この会社は電気工事業が本業ですが、付帯的に電化製品の物販も行ってきました。ご多分に漏れず、最近は量販店がたくさん近所に進出してきて物販部門の売り上げはじり貧状態、いよいよこの物販部門の存続打ち切りを本気で考えざるをえない状況になってしまったわけですが、このはなしを社長からうかがっている時に、この物販部門で電化製品を購入される方々にみられるある行動についての興味深いはなしを聞くことができました。

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情報の非対称性

売り手には正しい情報があり、買い手には正確な情報がないという、両者間での情報量に大きな差異がある場合のことを「情報の非対称性」といいます。これにはアカロフの「レモン市場」という有名なモデルがあります。(J.A.アカロフ,『ある理論経済学者のお話の本』,幸村千佳良ほか訳,ハーベスト社,1995)

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三種類の相互作用

このような情報の二分類によって相互作用については一歩進んだ理解をすることができます。それは、相互作用が物的と情報的の二種類ではなく、情報的相互作用が第一種の手段的情報と第二種の本質的情報によって分類される、少なくとも三種類の相互作用で構成され、それらが常に関連を持った働きをしているという認識です。

 A 物的相互作用
 B 情報的相互作用
   第一種の情報的相互作用、超越論的な枝の情報
   第二種の情報的相互作用、解釈学的な蔓の情報
村上,1994,p136)

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ふたつの相互作用

さて、ここからは、市場を形成する情報とはなんだろうか、という考察を始めます。それは、市場に流れる情報としての「信頼」とはなんだろうか、を考えることを意味していますが、ここではまず、自分自身、つまり「自己」という存在を考えてみましょう。

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信頼というメタ情報

ここで本書が、市場のなにに焦点をあてようとしているのかは、すでに十分察しがつくことだと思います。それは、人々の経験と解釈と信頼の蓄積を反映した、メタ情報(情報の基盤となる情報)としての「信頼」というようなものです。金子郁容は、

〈信用とは情報の情報である〉

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