池田卓矢氏池田卓矢氏


基調講演「『食』を通じた地域振興の可能性」

午前6時5分起床。岩見沢は雪。昨日行われた空知建協主催の地域創世フォーラムⅪ。今回のトップバッターは日本ソムリエ協会 認定ソムリエの池田卓矢氏だった。あたしは初めてお目に掛かかる人だったが空知の方々にはその存在は知れ渡っているようだった。

彼は「俯瞰する目」を持った人だ。この「俯瞰する目」とは、例えば「空知のワイン」と云った時に、原料である葡萄の生産量は(一定の畑からは)、チリでは30t、山梨では20t、与市では10t取れるが、空知では2tほどしか取れない。これでは「空知のワイン」をセイコーマートで1本500円で売れるはずもなく、空知の中ではいいワインですよ、と云っても、日本や世界のマーケットからは見向きもされないだろう、と云うのだ。

続けて彼は云う。目をつむってください。右手を挙げて下さい。左手を挙げて下さい。隣の人を見つめて下さい。隣の人と愛し合っててください。実際やってみたが最後(愛して下さい)はできる分けもなかった。つまり、行動は人に言われた通りに(やれば)できるが、しかし感情は誰にもコントロールできない。だから、やっている人間が少しでも楽しく話さないと他人には伝わらないのだ、と。

この「俯瞰」の発想と人の感情のコントロールはとても面白いもので、彼が何処かで学んだものだろうがちゃんと彼の話し成っていた。だが一方ではそれとは真逆の発想も彼は持っている。それは例えば滝川の寿司屋に寿司を食べるためだけに東京から来る人がいるという。

それはそれで素晴らしい事だが、しかし、人間の食と云うものは、所詮は「街的」なのであり、その土地で慣れ親しんだ食べ物こそが「うまい」のだ、と考える人なので、この滝川の寿司屋に行く東京の人は「空知のワイン」位に少ないのではと考える。しかし逆に考えれば、少しでも空知に興味を持つ人達を大切にしていくことが大切なのかもしれない。

彼の持つ情熱はとても熱い。それが側に居るだけで伝わってくる。熱くてこちらもつい熱くなるような熱さだ。その情熱とは100年後、「空知のワイン」をもっとメジャーにしたい、というものだが、100年間というスパンが果たしてどう働くのかをあたしに知らない。100年後に大発展しているかもしれ知れず、方や100年後は人口もグッと少なくなっているかも知れない。

けれど今を見れば、彼は「空知のワイン」を語り、そして広めようとしている。謂わば空知の語り部であり、芸人であり、ソムリエなのだ。あたしはソムリエという人達がなにを生み出しているのかを知らない人だが、彼は一つの芸として今の空知を語っていたのだ。