知床牛知床牛


演歌が育てた知床

砂子さんからの贈与は「知床牛」だった。頂いたのはよいが、あたしの頭の中には不思議さで一杯だ。それは、中に入っていた小さなパンプレットに書かれた一文からだ。その文章とは次の通りだった。

飼育方法
......牧場には「演歌」が流れています。なぜか牛も人も気持ちよく体が動き、最高の飼育環境を作り出しています。

なんなんだこれはと思った。「演歌」だと。モーツアルトを聞いて育てた牛というのは聞いたことがあったが、これは「演歌」なのだ。「演歌」で「牛も人も気持ちよく体が動く」と云う。これにはぜったい何かあるな、と思うと同時に、直ぐに、みちのくプロレスの気仙 沼次郎の「海の魂」を思い出していた。

ハァ よいとこらさ ハァ よいとこらざ
ハァ よいとこらさ よいとこらさ よいとこらさっさー!
ハァ 砕け散る波に ハァ 魚群が躍る

まあ、絶対に「知床牛」は聞いたいないわなー、と思う。

そんなあたしは「知床牛」が「しゃぶしゃぶ」用に切ってあることは百も承知のうえで、「すきやき」にしようぜ、と「すきやき」の準備をしたのだ。薄く切られた「しゃぶしゃぶ」用に肉が、かえって家でやる「すきやき」にぴったりであることを知っていたのだ。

家の「すきやき」は、野菜はご覧の通りの少なさである。浅草で云うところの「牛鍋」で、割り下で牛肉とザクを煮るというよりは焼くのだ。それを溶き卵で食べる。それが一番うまい。抜群である(とあたしは思う)。あくまでも肉がメインのこの鍋の中で、パット煮てパット食べられる肉は抜群だ。

息子が、「すきやき」というのは当時の人の最高のご馳走だったのだろうね、と甘い割り下を箸でなめながら云う。当時というのは、浅草に「米久」ができたばかりのころだそうだが、いやそんなことがなくて、今でも大変なご馳走なんだよ、と家人が云う。そう、今でも大変なご馳走なんだよ。

すきやき

カネ大大橋牧場
北海道網走郡大空町東藻琴38番地1