インターネット社会の方向性
金子郁容は、『新版 コミュニティ・ソリューション―ボランタリーな問題解決に向けて
』でインターネット社会を「ふたつの方向性」を持つ象限(※平面を直交した二直線で分けた四つの部分)によって描きだしています。(金子郁容,『新版 コミュニティ・ソリューション』岩波書店,2002)
ここでは、そのふたつの方向性を、金子によるインターネット社会の描写をなぞることで理解を進めたいと思います。そのふたつの方向性とは次のようなものです。
グローバルへの方向性
G(global)軸
・世界が平滑化しグローバル・スタンダードが支配的になる
・マーケット・メカニズムが一層重要になるグローバルな活動が必要とされる
コミュニティへの方向性
C(community)軸
・文化的・経済的多様性と分散化が進む
・たくさんの新しい関係性が発生し多種多様なコミュニティが形成される
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私の身の上ばなしのまとめ
さて、私の身の上ばなしもこの辺で終わりにしたいと思います。ここでは私の思うところを簡単にまとめておきましょう。
まず、インターネットが革命であることは、マクロ経済学者には理解しにくいだろうということです。なぜなら、彼らの問題解決方法は、個人と問題を切り離すことで成立しているからです。そういう方々にとって、インターネットの存在はファックスの延長上に考えることで十分な理解になってしまいます。しかし、個人の世界イメージの中では、これは「革命」に相当するようインパクトを持っているのです。
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答えのないコンサルタントの「わからない」という方法
私は、今では「答えのない」コンサルタントを明言しています。この「答えのない」コンサルタントというやり方も、既存のコンサルタント業界では絶対に認められない方法論のはずです。コンサルタントは「知っていること」が唯一の売りものなのであり、「知らないこと」はなにも売るものがないことを意味するからです。しかし、私は全く逆の方法を行っています。これを橋本治に倣って「わからない」という方法
と呼んでいます。
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私の革命
それでも私は、インターネットは「革命」だというのです。
確かに、マクロ経済学の見地からは、私の仕事のスタイルは、旧来からあるやり方そのものなのです。ただ、インターネットという安くて手軽で爆発的な普及効果を持った情報伝達手段を、それも早い段階で利用することで、ちょっと合理的で効率的に、そして「さきがけ」的に形成されてきたものでしかありません。つまり、私の行動は「さきがけ」としての勇気は賞賛されるでしょうが、そこには革命と呼べるような「新奇さ」はないということです。
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クルーグマンのおはなし
以下は、『ホワイトカラー真っ青』(原題は「White Collars Turn Blue」) と題された、クルーグマンの論文からの引用です。(翻訳は山形浩生がおこなっています。http://www.post1.com/home/hiyori13/krugman/lookbackj.html)
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IT化を語るという立場
本書は「IT化」の本らしく、まず「IT化」についての理解からはじめることにします。しかし、IT(情報通信技術)やIT化に関する議論をするとき、特にそれが本書のように制度や組織のあり方まで意見が及ぶような場合には、これはどんな論者でもそうなのですが、それぞれがある仮説に立って自らの「IT化論」を語っていることを理解しておく必要があります。IT化が社会に与える影響をそれぞれに仮定して理論の展開をしているのです。IT化に関してはどこかに定まった見解があるわけではありません。
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