IT化ってなに(IT化と情報化の簡単な分別方法)

本書では、IT化と情報化を明確に区別していますが、ここではIT化と情報化を簡単に分別する方法を書いておきます。それは、簡単にはこんなふうに理解してもらえばよいかと思います。


IT化とは、コンピュータを使うことがインターネットや電子メールを使うことと同じ意味であるようなもの。つまり、

 〈IT化とはインターネットを使うということ〉

です。そしてその目的とは、

 〈インターネットの精神文化に自らを開放(コミット)すること〉

です。

これに対して、情報化は事務機器の延長上にコンピュータを考えるようなものです。つまりOA化です。パソコンを買い揃えること、ネットワークを構築すること、業務用のアプリケーションを導入すること、これらは情報化です。これはクルーグマンがいうように、インターネットは革命でもなんでない次元のものです。コンピュータはただの事務機器の延長上の存在に過ぎません。インターネットは、ただファックスの延長上のようなものであって、個人、組織の文化的精神的な革命でも何でもないのです。

すでに述べたように、本書は「公共工事という問題」の問題解決方法を、「コミュニティ・ソリューション」に求める立場をとっています。そしてその推進エンジンである「ソーシャル・キャピタル」の編集作業という問題をIT化を通して考えるのですが、その理解への第一歩が、自ら「インターネットを使うということ」と「インターネットの精神文化に自らを開放(コミット)すること」だとするです。

これは「答え」ではなく「方法」を提示しているに過ぎません。つまり、これが第三の道とでも呼べる「コミュニティ・ソリューション」を見つけだせる(決して近くはありませんが)近道なのだということです。IT化が、第一義に個人とその組織の文化的精神的な革命でなくては、「公共工事という問題」の解決に対して情報を扱う機器(IT)は何の役にもたたないといということです。

以上が本書の立脚している、〈現代社会はIT、それもインターネット社会である〉という時のIT化社会、インターネット社会に対する基本的な理解です。この基本的な理解を足場にして、本書のもうひとつのIT化理解の基盤である〈IT化が扱う情報とは「ミーム」のことである〉ことの理解へと移ります。