行動においては肚を据えて決断し、出来事に身を投じつつよく見つめるしかない(『メルロ=ポンティ入門』:p244)

060815.jpgメルロ=ポンティ入門

船木 亨(著)

2000年3月20日
ちくま新書
660円+税



メルロ=ポンティについてはノーマクだった。「桃語:キアスム」を書くにのに、彼に関する唯一の蔵書――それも文庫本である――、『メルロ=ポンティ・コレクション』を読んでいて、もっとしっかり読んでおけばよかったと思ってしまった。それで新たに『メルロ=ポンティ入門』から読みはじめた。

2004年の空知建設業協会の地域再生フォーラムで、北大の山岸俊男先生は(信頼の要件として)「肚を据える」ことを話されていた。そしてキアスムであろうとする私の「考える技術」は、「全人格をもって出来事を引き受ける」ことでしかない。

つまりそれは「肚を据える」ことなのだと、ようやく山岸先生の云う「信頼」と私の「考える技術」が根源でつながってきたような気がしている(気のせいだけかもしれないが……)。

この「全人格をもって出来事を引き受ける」というフレーズは、いままで使ったことはなかった――つまり私の語彙にはなかったものだ――。今回「桃語:キアスム」で、このフレーズを使ったのは、この『メルロ=ポンティ入門』を読んだからで、つまりこの本からの引用なのである。

この本は、単なるメルロ=ポンティの思想の紹介ではなく、著者(船木亨氏)の思想が色濃くハイブリッドされている。つまり船木氏のことばで書かれていることで、とても読みやすい。それもただ読みやすいのではなく、メルロ=ポンティの思想の肝をちゃんと押さえていると思う。

まだ通し一回読んだだけなのだが、私的にはかなりおもしろい。しかしなにがおもしろいのかを書くのは、一度読んだぐらいでは無理であって、更に読み込みたいと思う。そのための時間を割く価値のある本だ思う。