村山からの帰りは、仙台に行く大山さんの車に便乗して仙台まで出て、それからはやてに乗って上野まで戻った。
茜姫
仙台へ向かうみちすがら、大山さんは壽屋寿香蔵に寄ってくださり、私は「茜姫」という菓子をいただいた。
菓子といっても、それは梅漬けであって(壽屋は漬物屋である)、いってみれば甘い梅干のようなものである。
しかしその甘さが絶妙で、甘すぎないことで、私のような辛党(酒飲み)でも、うまいな、と思う。
そして額田王の「あかねさす~」の句が書き添えられた添え書きがなんともよい。
これでいいということはないが
これがわたしの
精一杯の姿です。
上はその一文だが、これ読んだだけでも、この店は、ただものではないな、と思う。
壽屋寿香蔵
そんな壽屋の「ただものでなさ」は、蔵を改造した店舗にもよくあらわれている。
店先に赤いポストがあり、それはまだ現役のようで、その存在は、郷愁を際立たせ、この店の建築的戦略を見事に成功に導いているように思う。こういう小技のきく店はただものではない。