テキスト
今回の講座の(一応)テキストである。(結局、ほとんど使わなかったけれども…)
今回の法大ECでは、事前に使用テキストを指定できていなかった。それは「考える技術」とはバイロジックの実装に他ならないのだけれども、それを解説している手頃な本が見当たらなかったからだ。
ただ唯一、中沢新一がいるのだが――たしかに第一候補は中沢新一の『芸術人類学』だった――けれど、これはちょっと抽象的すぎやしないか。つまり実生活と結びつかないのじゃないか、ということで保留にしたまま、講座は始まってしまった。 (いまにして思えば、『芸術人類学』にしておけばよかったと後悔している。)
最近、『「結晶知能」革命』を見つけ、これがいいかなとも思った。しかしこれは、読んでみるとどうしても年寄り臭い。「考える技術―第二の人生編」のような感じで、受講者の年齢層を考えれば、いまいち「向き」じゃないよな、と躊躇していたわけだ。(内容は決して悪いわけじゃない)。
ハイ・コンセプト
そこで白羽の矢が立ったのがこの本なのである。これを選んだ理由は、何よりもテクスト空間がスカスカであることだ。つまり読むのが楽だし、それは講義中の参照が楽なことでもあるし、一応「ビジネス書」なので、「考える技術」が今後のビジネスシーンに不可欠なものであることを示したかったからでもある。
理論と実践
この3冊に共通しているのは、「考える技術」が、論理思考と対象性の知性のバイロジックであることを明らかにしていることだ。中沢新一がその理論的な部分を書いているとすれば、あとの2つは実践編のようなものである。今回は実践編、具体をテキストとして選んだ。
それは、実践編、具体については「参照」で済まそうとしているからであり、なによりもその理論的根拠と「キアスム(ひねり)」を理解して欲しいし、それに多くの時間を費やしたいからだ。
例えば、「論理思考」「対象性の知性」「バイロジック」とは、中沢新一の語彙(中沢新一語)であり、今回の法大ECでの「指し示し」(名指し)は、中沢新一の語彙を基本にしている。つまり、理論的な部分は中沢新一と彼の膨大な知識リンクを拠所としながら、それを、具体例や工作の時間を通じて理解し、実装して欲しいと思う。
というわけで、今回選んだ『ハイコンセプト』が使っている言葉は、若干ピンとこないころもあるが、そこは大前研一による訳文を、さらに中沢新一語に翻訳しながら連関機能をフル回転し、楽しい講義にしようと思う。
参考図書
『芸術人類学』 中沢新一(著) 2006年3月22日 みすず書房 2800円+税
『「結晶知能」革命―50歳からでも「脳力」は伸びる!』 佐藤眞一(監修) 2006年6月1日 小学館 1300円+税