桃知商店よりのお知らせ

日本人は意地悪か―Web2.0は社会心理学的、行動経済学的なものだ。

午前6時30分起床。浅草はくもり。

今朝は、イエイリ建設ITラボの、『「日本人は意地悪か?」記事で考えた「まちづくりデータの流通」問題』に反応してみたい。

世間一般に、「当社に著作権があるから」といった理由で、自社で使いもせず、 かと言って、売れる訳でもなく、“死蔵”されているデータはいろいろとありそうです。 その一方で、インターネットの世界では、タダで提供されるサービスや、タダ見できるコンテンツ が、いろいろと登場してきますが、主にアメリカなど海外が発端となり、日本がそれに追随していく、 というパターンが多いような感じがします。

日本人は意地悪か

この要因を家入さんは「日本人は意地悪か」に探っているのだが、ここでは日本経済新聞に連載されている大阪大学の西條辰義教授の「経済行動と感情」を参照している。


この連載は、相手の行動内容によって、自分の行動内容を変える「ゲーム理論」の切り口で、公共財の供給を考えるものです。 この連載で、興味深かったのは、日本人とアメリカ人の行動の違いです。 「日本人は相手の利益を減らすために、わざわざ自分の利益も減らす」 「日本人は当初、公共財へのタダ乗りを目指すが、結局、うまくいかない」 「日本社会は『協調型』といわれるが、実は『協力しないと後が怖い』から」 といった指摘です。

このサイトの熱心な読者なら、これを読んで、山岸俊男先生の一連の研究――たとえば「相補均衡論」や、このサイトの「公共財ゲーム」や「浅草は利己的な街なのである。だからこそ戦略的に利他的なのである。」といった記事を思い出すかもしれない。

そして家入さんは、

うーん、インターネットでタダのサービス提供において、アメリカが日本より 先行しがちなのは、「このためかも」、と思ってしまいました。 つまり、「自分は損をしないくせに、相手が得をするのが許せない」という気持ちで、最初は使いもしない自分のデータを提供しないでいるうちに、どんどんタダの データを供給する相手にビジネスのネタが集まり、シェアを奪われたりし始めて初めて、自分もタダのデータを提供し始める、という構図でしょうか。 どうせ、利益を生まない資産なら、無料もしくは「オマケ」でどんどん提供していく というのも、一つの経営戦略かもしれませんね。

としているわけだが、これはつまり、Web2.0化する社会(アメリカ化する社会と言い換えてもいいだろう)に生きる日本人を、社会心理学とか、今はやりの行動経済学の視座から見たときに得ら06103100.jpgれるモノだろう。

「ひねり」をみること

ただそれには、Web化する現実――Web化するというのは、たとえば「インターネットでタダのサービス提供において、アメリカが日本より 先行しがちなのは」という特徴のことだ――、現実化するWebの時代(つまり2.0的社会)というキアスム図式的な理解が必要だと云うことだろう。

つまりWeb2.0(と私たち日本人の行動特性)のミーム的なものを理解しなければならないだろう。

つまり私には、「どうせ、利益を生まない資産なら」は、言語矛盾に感じてしまう。利益を生まないものは資産ではないのであって、オープンにする(無償で提供する)ことで、たとえばシェア拡大に結びつくものなら、それは立派な資産(若しくは投資)なのである。

それはある意味「無償(タダ)程怖いものもない」を実証しているが、反面、贈与する喜びを人々にもたらしているようにも思う。

贈与の原理

つまりそこには「交換の原理」ではなく「贈与の原理」が働いている。ではなぜこの「贈与の原理」においてアメリカ人は日本人の一歩先をいけるのか、ということだ。

――Web2.0にある「Radical Trust」の正体は、じつは「贈与の原理」に基底を持っているのじゃないのか、と最近私は考え始めている。(これについては後日詳しく書く……かもしれない)。

私たち日本人は、心の深淵に集団主義という幻想をいだく者たちであり、「浅草は利己的な街なのである。だからこそ戦略的に利他的なのである。」ように、実は利己主義なのよ、と(私は)考えている。

ではそんな私たちが、このWeb2.0化する社会で、如何に生きるのか(適応していくのか)、そのためにはどのような社会制度が必要なのか、ということを考えることが、私が11月14日に岩見沢市山岸俊男先生と対談しようとすることなんだなぁ、と再確認させていただいたところで、今朝はおしまいなのである。(笑)

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「日本人は意地悪か?」記事で考えた「まちづくりデータの流通」問題

管理人のイエイリです。 先週、松下電工の長濱龍一郎さんにインタビューでおじゃま... 続きを読む

Comments [2]

No.1

おはようございます!
桃知師匠師匠からトラックバックをいただけるなんて、大変、光栄です。
私はゲーム理論を「意地悪」の視点から見る西條先生の発想が面白いと思ったのですが、桃知師匠は、さらにWEB2.0の思想まで理論を包含されておられ、「真骨頂」ですね。
大変、興味深く読ませていただきました。どうもありがとうございます。

No.2

>イエイリさん
こちらこそ、コメント&TBありがとうございます。
丁度山岸先生との対談のことが頭にあって、はまる話題だったので反応してみました。

私は「意地悪」――「日本人は相手の利益を減らすために、わざわざ自分の利益も減らす」 「日本人は当初、公共財へのタダ乗りを目指すが、結局、うまくいかない」 「日本社会は『協調型』といわれるが、実は『協力しないと後が怖い』から」――とう特性が、ある時代はうまく機能していたのだと思うのですが、これがこの時代(Web2.0化している時代)に「負」の特性として表面化しているのはなぜだろう、と云うようなところに興味があります。

まあ、ぼちぼちと考えてみますね。(笑)

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