本家しぶそばの特盛そば
徹夜で寝てないのだ。浅草はくもり。この日は久しぶりの渋谷だった。渋谷とくれば沢山の立ち喰い蕎麦が待っているが、あたしは「本家しぶそば」を選んだ。
「しぶそば」は好きな蕎麦屋だ。今回は渋谷の「本家」である。お昼時で店は満杯だ。食べるのは「もり」と決めいざ出陣だ。長い行列に紛れて受付で「特盛」を註文。受付のお嬢さんが「特盛一丁」と註文を繰り返す。
満員の店内に紛れ混んで場所を決める。水は自分でとってくるシステムなのは立ち喰い蕎麦の流儀だろう。そうしているうちに前の方から「特盛のお客さーん」と声がする。あたしは「はい、特盛です」と手を挙げて答えたのだ。
「ほー早えじゃねぇか」、と何故か声を殺して蕎麦を手繰る。手繰っていくうちに「いや、これはなかなか大変だぞ!」、と頭の片隅で声がする。ズスー、ズスーと手繰る、手繰る。またズスー。ズスーと手繰る。いっこうに蕎麦が減らないのだ。
頭の中では蕎麦に埋もれる自分が見える。「なんてことだい!こんなのも食い切れないなんて!」、あたしの頭では声にならない声が聞こえる。だけど手繰ったのだ。もくもくと手繰った。しかしダメだったのである。半人前ほどの量がついに食い切れず残ってしまったのだ。あー。
本家しぶそば
東京都渋谷区渋谷2-24-1 東急百貨店東横店西館2F