野むらの真っ黒なそば+イカ天
午前4時50分起床。浅草ははれ。確定申告で浅草税務署に行った帰りに、蔵前から歩いて帰るのがあたしの楽しみ、と云えば楽しみの一つになっているのだが、この日は反対側の浅草橋に向かって歩いたのだ。
何か目的があるのか、と云われれば「ある」のであって、何といっても浅草橋ー秋葉原は立ち喰い蕎麦の黄金地帯なのである。「何処がいいかな」、「ちょっと駅から歩く処がいいな」、と考えて「野むら」まで出掛けたのだ。
「野むら」はビルの一画にある。だからちょっと見た目にはわからないかもしれない、というよりはわからないのだが、よく見れば「スタンドそば」と書かれている。
あたしは早速中に入りそばを頼む。それからトッピングする天ぷらを選ぶ。壁に貼られたピラから一番上のイカ天を乗せてもらう。とここまでは普通の立ち喰い蕎麦なのであるが、丼が目の前に出てきた時には度肝を抜かれたのだ。
汁が真っ黒なのである。その「黒い」もただの黒さじゃなく「イカ墨」でも入っているのじゃないか、という黒さなのだ。その汁が天ぷらのアイボリーと相まって、あたしは「いいぞ、これは」、と喜びを隠せない。
しかし汁は黒い方がよいのだがここまで黒いとあぜんとしてしまう。そして食う。
茹で置きの蕎麦は何故か真っ黒い汁に合うし、中身のイカの五倍はあるような天ぷらはここでしか見られない見事な造作である。そして汁が姿に似合わずに優しいのだ。塩辛くもない不思議な蕎麦汁なのだ。
実はこの日は腹に余裕があり、できればもう一杯のつもりでこの店に入ったのであるが、なぜかこの一杯で腹が膨れて、今日のランチはお終いになってしまったのだった。
野むら
台東区浅草橋5丁目20-8 CSタワー 1階