冷やしたぬきそば冷やしたぬきそば


冷やしたぬきそば

午前4時45分起床。浅草は晴れ。うまいと思った。「冷やしたぬきそば」を「文殊浅草店」で手繰ったのだ。「冷やしたぬきそば」は、あらゆる蕎麦の中でもちょっと異様だ。例えば、あたしが常用している「ゆで太郎本所吾妻橋店」には「冷やしたぬきそば」ばかりでなく「たぬきそば」もない。狸は一匹もいないのである。

ただし、「たぬきそば」をつくる事は容易であり「かけそば」を頼み、その上に無償で提供されている揚げ玉をあげればいいのだ。しかし、そこまでして「たぬきそば」を食べる人は一握りしかおらず、ましてや「冷やしたぬきそば」なんて(「ゆで太郎」では)忘れられた存在となっている。

しかし「たぬきそば」はメジャーな存在だ。揚げ玉(天かす)を添えたこのメニューは天ぷらの「タネ」を入れない(タネを抜いた)揚げ物の「タネヌキ」であり、「タネ抜き」を語源に「たぬき」と称したとの説がある。そば屋で「天ぬき」を頼むと天ぷらそばのそば抜きが出てくるのと同様にだ。

「文殊浅草店」は堂々とこれを売りものにしていた。「冷やしだぬきそば」のうまさは別格だ。揚げた間が味に決め手で、揚げ玉としてこれを揚げているに違いない。それにこの丼の中に広がる小宇宙。紅い汁、わかめ、蕎麦、白いかまぼこ、そして揚げ玉。汁の塩梅が良いのだろう、この「冷やしたぬきそば」はうまい。

文殊浅草店
東京都台東区浅草1丁目1-12 浅草地下街