天とじそば天とじそば


浅草で始めての蕎麦屋は弁天だった

午前3時起床。浅草は晴れ。三丁目の「弁天」で蕎麦を手繰った。この蕎麦屋には大変世話になっている。なにせあたしが浅草に来て初めての蕎麦屋が「弁天」なのだ。そしてその後何十回と足を運んでいる。だから「弁天」には足を向けて寝られない(笑)。

「弁天」は気の置けない街の蕎麦屋だが、コロナ前にはお客さんが列を作っていたものだ。あたしはそれを喜んでいた。みんなが「弁天」の味を覚えてくれることをだ。

「弁天」では本当に色々なものを教わった。例えば「天ちら」とはなんだかわるだろうか、「天ちら」とは「天ぷらの盛り合わせ」の事だ。「ちら」なのである。初めてそれをメニューで見たときに、その言葉の妙に感動し、震えがきたのを覚えている。これが「天ちら」なんだと。

天とじそば

にしんそば」の透明な汁を知ったのもこの店だ。というか、他の店で「にしんそば」を食べて「弁天」のようは透明な汁に出会ったことがない。しかし、久しぶりの「弁天」である。少しは気後れするかな、と思っていたが、なんだろうこの店内は。いつもの通りの温かさだった。

さて、この日の主役は「天とじそば」だ。「天とじそば」を手繰ったのも浅草に来てからだ(たぶん)。だから「天とじそば」も「弁天」で教わったのである。

あたしと家人が同じものを頼むのは珍しいが、この日は二人仲良く「天とじそば」にしたのだ。「天とじそば」は、「海老天」を玉子閉じし、最後に三つ葉を散らした蕎麦てあるが、その特徴はとても優しいことだ。その汁のつくり、ふわふわとした閉じた玉子、そのどれもが優しい。そしてあたしを囲む客筋もまた優しい。

優しい、この言葉が、本当に似合う蕎麦屋は、浅草では「弁天」が一番だろう。気の置けない居心地の良い蕎麦屋なのだ。この店で学んだ「寿司と洋食と蕎麦は、近所のがいちばんうまい」という「街的」を想い出す。だから誰がなんと云おうとも、何を食べてもまずいものはないのである。[浅草でランチ

天とじそば

弁天
東京都台東区浅草三丁目21-8