あんかけ
午前4時45起床。浅草はくもり。
この日は『琴富貴』でランチと決め込む。
今日は何にしようかと品書きを眺めていたのだが、発作的に「あんかけそば」を注文してみたのだ。
「あんかけ」といえばその昔(まだ脳梗塞で倒れる前の話だが)、何を食べていいのか決めかねている時の「逃げ」の定番だった。
もっともそれは中華料理店での話で、「あんかけ焼きそば」や「五目あんかけそば」のことである。
しかしここは生粋の蕎麦屋であって、決して中華料理を出すわけではないことは百も承知だ。
運ばれてきたのは、黒々とした「あんかけ」に満たされた、謂わば「あんかけおかめそば」とでも呼ぶべき一杯だった。
要するに、麩、筍、鶏胸肉、椎茸、かまぼこ、なるとといったおなじみの具材が、熱々の「あん」によってしっかりと閉じ込められているのだ。
そして、そのあんが閉じ込めている最たるものこそが、他ならぬ「熱」そのものなのである。
ただし、この蕎麦の唯一の特徴と言えば、いささか見映えがよろしくないことか(笑)。
一見しただけでは「何だかよく分からない食べ物」なのだ。
さて、お待ちかねの「あんかけ」がやってきた。
「あん」が静かに「おかめ」の具材たちを包み込んでいる姿は実に好ましいのだが、スマホで写真を撮ったところで何が何だか分からないだろうなと思う。
しかし、そんなことを考えている時点で、世間で言う「インスタ映え」を気にして写真を撮る若者たちと同類ではないか。
あたしもいい年をして同じ部類なのだな、と一人苦笑いしてしまった(笑)。
まずは筍を箸で持ち上げてみると、「あん」を纏ったギザギザの表面に薄い膜が出来ている。
ハフハフと早速口へ運んでみれば、とにかく熱い!そして実にうまいのだよ(笑)。
ただ、この一杯を支配している味の主役が「しいたけ」であることは直ぐに分かった。それほど「しいたけ」の旨味と出汁が濃厚に効いているのだ。
続いて麺を手繰ってみる。この蕎麦を手繰るのにも、粘りのあるあんの中からじわりと引っ張り出す作業が必要になる。
引っ張り出された蕎麦も見事なまでに「あん」でコーティングされている。
まるで一本残らずコーティングされていなければ気が済まないといった風情だ。
そこからさらに具材を取り出して楽しむのだが、どの具材にも当然のように「あん」がねっとりとまとわりついていて、それが実にうまかったのだよ(笑)。

