チャーハン
今回紹介する来集軒はチャーハンである。一見なんの変哲もないチャーハンである。具もそっけなく、卵、チャーシュー、そして玉葱しかはいっていない。
しかし、この玉葱が曲者なのである(たぶん)。食べると、ケチャップライスの味がする。それが強烈に郷愁を誘うのであり「かなしい」。
それはなにか子供の頃に食べたような気がする……ような気がする……ような気がする……というような永遠の円環を描く曖昧な記憶の循環であり無意識層にこの味はデータ化されている。
だから一口食べるとその記憶にスイッチが入ってしまい、そうなったらもうどうしようもないく、めくりくるのはランナーズ・ハイならぬチャーハンズ・ハイ。
世界一うまい
こういう無意識層の記憶に訴えかけるようなものは「どうしようもないもの」なのだ※1。つまりあたしにとっては、これは世界一うまいチャーハンでしかなく、それは誰がなんといおうが覆らない。
その上このチャーハンは食感が素晴らしい。全体がなにか、つるつる、ぷりぷりとしていて、口の中がくすぐったいように嬉しい。こんな嬉しいチャーハンにはここでしかお目にかかったことがない。是非、ラーメンと一緒に食べていただきたい。
ラーメン
当然にラーメンはうまい。これも時々どうしようもなく食べたくなる記憶の奥底であり、その姿はゆるぎない。
たぶん今の基準からいえば少々物足りないかもしれないが(つまり古臭い)、そんなことはどうでもよいのである。
あたしからすれば、いじりすぎて記憶に残らない味のラーメンよりも、これがラーメンである。
来集軒
来集軒は、昔ながらの東京系あっさり醤油ラーメンの老舗であり言わずと知れた超有名店である。
それは進化のとまった空間かもしれないが、けっしてレトロなテーマパークではなく、(観光客も多いけれども)普段は地元の人達の
来集軒 (ラーメン / 浅草) |
※注記
- それゆえ、「写真」のノエマの名は、つぎのようなものとなろう。すなわち、《それは=かつて=あった》、あるいは「手に負えないもの」である。 (ロラン・バルト:『明るい部屋―写真についての覚書』:p94)
Comment [1]
No.1kenさん
この記事を拝見して、来集軒でラーメンとチャーハンを食べるのを楽しみにしてお店を訪ねてみました。お勧めのラーメンとチャーハンを注文し、料理が出てくるまで一服しようとお店の女性に「灰皿を下さい」とお願いすると「そこにあるから自分で取って」と投げやりな対応にびっくり!更に客席から調理場丸見えなので、チャーハンを作るところを注意深くみていると、バケツのような物の中から作り置きのチャーハンをフライパンで炒めなおし、ラーメンと一緒に運ばれてきました。チャーハンは生ぬるく作り置きを炒めなおした為パサパサで今まで食べたチャーハンの中で最悪のものでした。
ラーメンに期待を込めて口に運ぶと、スープは味が濃すぎて調味料の味だけが強烈に襲ってきて、とても食べる気がせずほとんど残して期待はずれと不愉快な気分で店を出ました。