昨日は、三遊亭あし歌さんの地元、足利での勉強会に参加した。
本人曰く、
…地元有志の力を借りまして隔月で勉強会を開催する運びとなりました。毎回、初演の噺を掛けるのが条件。死ぬ気で精進しやす! 当日の演目は『粗忽の釘』『錦明竹』(初演)『町内の若い衆』(初演)の三席。今から覚えます……。
なのである。
落語と云う一階部分
しかし、前途ある若者の持つ情熱は、うらやましい限りだ。
本人にしてみれば、初演を毎回やる、という条件は、正直辛いものだろう。
しかし、それをひとつ超える度に、落語と云う種(象徴)の持つミームは、自らのものになっていく。
それはミームを「私」のものにすることで、個体化することを実感する過程となるだろう(スティグレールに見せてあげたいぐらいだ)。
つまり、三遊亭あし歌さんには、落語と云う象徴、中景、一階部分がある。その一階部分を足場に、あし歌さんは一人前になっていく。それを、希望、と呼んでもよいだろう。
友情
そして今回は、友情の持つ機能の凄さも見せつけられた。
今回の勉強会が開催できたのは、あし歌さんの友人たちのおかげである。
三遊亭あし歌に、地元足利で演やらせたい、と云う友人がいて、彼の噺を聴こうとする友人がいる。これはなにものにも替えがたい、あし歌さんの中景であり、パトリであり、財産である。
そして広くて薄い紐帯へ
そんな二つの足場(中景)のおかげで、あし歌さんは希望を持つことができる。新しい演目に挑むことができる。そして、この二つの中景を軸に、また新しいネットワークが広がる。
今回の勉強会開催の、中心となって働いていた吉田さんは、あし歌さんの直接の友人ではない。吉田さんは、足利に住む世話好きの植木屋さんである。(笑)
しかし、mixiと云う、バーチャルな場でのつながりを基にして、あし歌さんの友人と、そしてあし歌さん本人とつながった彼は、それをバーチャルにとどめず、リアルな世界での「実行」にまで持ち込んだ。それは、吉田さんの人柄と、実行力の賜物なのだと思う。
そんな吉田さんをHUBにして――吉田さんは「桃組」メンバーである――、私は、あし歌さんと彼の友人たちとつながることが出来た。これを、進行する「広くて薄い紐帯」と呼んでもよいだろう。
そして当日は、そんな紐帯とは関係のない方々にもご参加もいただいた。それは偶有性をもった新たなつながりである。今回の勉強会と云う、骰子一擲がもたらしたつながりである。
きっと、次回もまた、おいでいただけるはずだ。そしてそこには、また新しい紐帯(リンク)の可能性、希望がある――今回おいでになった方々が、また新しいお客さんをつなげてくれるだろう――。勿論そのHUBは、あし歌さんの芸であることは云うまでもない。 と云うことで、次回は九月二十三日(土)の開催予定である。