かおりかおり


二十世紀と長十郎

午前5時30分起床。浅草はくもり。これは「太陽堂のむぎせんべい」と一緒に家人の実家が送ってくれた「梨」である。この「梨」の名前は「かおり」と云う。子供の頃に「梨」と云えば「二十世紀」と「長十郎」であった。この2種類の「梨」があれば少年のあたしは十分に満足していたものだった。

満足の用件としては、甘いことだろうが、芯の部分は酸味が強いのだ。しかしあたしはその部分を食べていたのだ。いまじゃちょっと食べる気にもならないものだが、しゃりしゃりとした独特の食感がナシの特徴だとすれば、それを何十杯も強烈にしたような味がしたのだ。

かおり

あたしは子供の頃、この「長十郎」ばかりを食わされていた記憶があり、そして稀に「二十世紀」という塩梅だったように思うう。「長十郎」は果肉がややかためで、甘すぎないというか、ほどよい甘味がありみずみずしさのある梨だが、あたしの食べた物には果汁の少ないものも含まれていたように記憶している。

一方「二十世紀」は黄緑色の「梨」だ。甘みの中に酸味を持っている。果肉は果汁を多く含んでいて比較的おいしかった。このさわやかな酸味こそあたしの好きな「梨」の味だったのだ。そして「かおり」という「梨」である。「かおり」はその名の通り、香りがいい、サイズも大きい。

「かおり」を剥いて一口食べてみる。なんだ、と思った。凄い果汁の量だ。そして程よい甘さだが、酸味が感じられないので少しがっかりしたが、その溢れる果汁とシャリシャリとした食感は格別である。うまいな、と思う。あたしが子供の頃食べていたものとはランクが違うと思ったのだ。

しかし、これがあの(記憶の中の)「梨」なのか?とも思うのだ。今や、果物の種類は果てしなく広がっているように思える。いちいち名前を覚えていられない。そんな中、このめずらしい「かおり」を送ってもらった。でも「二十世紀」を食べてみたいな(笑)、と思う今日この頃なのだ。

かおり

かおり