牛すじ煮込みとホッピーと
午前3時40分起床。浅草はくもり。
この日は井之上さんが引越をしてしまうというので、阿部さんも一緒に、先週に引き続き『居酒屋浩司』で一献傾けることにした。
あたしが『居酒屋浩司』に着いたのは土曜日の午後5時15分。この日もホッピー通りは大賑わいだ。
暖簾をくぐれば、そこにはかつてあたしたちが愛した「おじさんの憩いの場」とは少し違う景色が広がっていた。
右を見ても左を見ても、溢れんばかりの若い熱気。
かつては競馬新聞を片手に背中で語る先輩たちの、煙草の煙が似合う場所だったはずが、今はスマートフォンのシャッター音と、弾けるような笑い声がBGMだ。
気がつけば、店内で最高年齢なのはおそらくあたしだろう。
そんな少しの場違いさと、確かな時代の移ろいを感じずにはいられなかった。
あたしは「瓶ビール」と「牛すじ煮込み」で時間を繋いでいたが、二人が現れれば、頼むのはやはり「ホッピー」だ。
各自の好きな酒肴を頼むと、目の前に運ばれてくる品々は、あの頃と何も変わっていない。
どっしりと味が染みた「牛すじ煮込み」に、たっぷりのネギ。
サクッとした衣に懐かしさが詰まった、厚切りの「ハムカツ」。「海老の唐揚」も「鶏皮ポン酢」も「もつ焼き」も相変わらず元気に登場する。
そして、キンキンに冷えたジョッキに自分の加減で作る、琥珀色の「ホッピー」。
この「変わらぬ味」がどっしりと構えていてくれるからこそ、あたしたちはこうしてまた、この場所に戻ってくるのだろう。
ただ、「もう一度ここを借り切って宴会をやろう」なんてとても思えないほどの賑やかさではある。
しかし、周りの顔ぶれは変わっても、グラスを交わす友との語らい、そして舌に馴染んだ出汁の味は変わらない。
いや、むしろ以前より美味くなっている気さえする(笑)。
『桃組』の聖地が、新しい世代の「集いの場」へと形を変えていく様子を、少しの寂しさと共に眺めつつ、流れる月日を最高の酒肴にして飲む一杯は、それはそれで、とてもうまいものだったのだよ(笑)。
ホッピー白氷なし
[浅草グルメ]
居酒屋浩司 浅草店
東京都台東区浅草二丁目3-19

