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格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人:中野雅至。

午前4時起床。浅草はくもり。

格差社会の世渡り

格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人

中野雅至(著)
2007年6月21日
ソフトバンク クリエイティブ
700円+税 


ここ1年のこと

中野の著作は、先に『格差社会の結末 富裕層の傲慢・貧困層の怠慢』を読んでいて、それは安倍晋三が自民党の新総裁になる日だった。

GC空間その日私は、開発主義のハードランディングを確信せざるを得なかったのだが、それから1年も経たない内にいろんなことがあった。

福島、和歌山、宮崎の県知事の逮捕、沢山の官製談合の摘発、公共工事の一般競争入札化、そして松岡元農相の自殺――すべては第4象限(パトリ・種)への淘汰圧力である。

そして気が付いてみれば安倍内閣の支持率は大きく下降していた。

内閣支持続落25.7%=不支持、初めて5割突破-年金不信、閣僚辞任など影響」Yahoo!ニュース - 時事通信

時事通信社が6~9日に実施した7月の世論調査結果によると、安倍内閣の支持率は前月比3.1ポイント減の25.7%と続落し、政権発足後の最低記録を更新した。不支持率は同4.8ポイント増の53.2%で、初めて5割を突破した。年金記録漏れ問題に加え、原爆発言による久間章生前防衛相の辞任や、赤城徳彦農水相の事務所費問題などが影響したとみられる。参院選の投開票を29日に控え、政府・与党にとっては極めて厳しい結果となった。

今行われている選挙の争点は、年金問題とか、政治と金の問題とかいわれているけれど、それは開発主義の解体とともに深刻化する格差(「負け組」の拡大)が生み出す不満の吸引先でしかない。

安倍内閣に対する不支持率の増加の根源的な原因は、格差の問題に対するプラグマティックな共感の無さ(庶民感覚の無さ)にあるのだろう、と(私は)思う。

格差社会

閑話休題。中野雅至は格差社会について書く。 その切り口はおもしろいとは思うが、格差関係のこういう新書本も限界じゃないのかな、と思う。私的には飽きた。

まず、中野の視線は「努力」という美徳の機能不全に向けられる。

努力しないから不況になったわけではありません。努力しないから貧しくなったわけでもありません。
(中略)
…努力する日本人が減っているわけではないと思います。人間は生活がかかってくると働きます。貧しいのが嫌だと思えば勉強します。その基本的な態度に、露骨に変化が生じたとは思えないのです。(中野:p38-39)

しかし努力しても報われない方々が増えている、と中野はいうわけだ。

私もそう思う。それは例えば、ワーキングプアの問題だが、今問題にしなくてはならないのは失業率ではなく賃金格差なのである。

それは私的には、「交換の原理が僕たちを定義しようとしているとき、僕たちは情報を発信しながら、定義されることから逃げ続けなくてはならないだろう。」ということだ。

人は見た目が10割

ではなにが〈勝ち組/負け組〉を決めているのかというと、中野は「人は見た目が10割」だというのである。

しかし、運や才能、生家以上にポストバブルを生き抜く上で重要だったものをご存知でしょうか。それは「アピール力」「PR力」です。どれだけ努力しても、自分の成果や実力をうまくアピールできない人間が没落する一方で、自分の実力を上手くアピールできる人間が勝ち残ったのがポストバブルなのです。(中野:p18)

これはある意味正しいと(私は)思う――なぜならアピールとは(私の立場では)情報を発信することでしかないからだ。

キアスム 

しかし中野にしても、格差社会の世渡りの決定打があるわけではない……努力も大事だといってみたりね。

でもそれは、私にとっては当たり前のことでしかないし、(私は)半分は偶然(運)だと思っている人なので(それはWeb化する現実を観察していれば当たり前の認識でしかない)、中野のいっていることはキアスムなんだよね、と理解することぐらいはできる。

キアスム転換にはふたつある。

  1. 自らひねること
  2. 自らの意思と関係なくひねられてしまうこと

骰子一擲

つまり現実は、このふたつの相互作用(ハイブリッド)なのだとすれば(今はその傾向が100年ほど前と同じぐらいに強い)、現実は偶然を孕む。

偶然を孕むということは、自らの意思ではどうにもならないような現実を、全人格をかけて受け入れることも必要だ、ということで、それを(私は)、マラルメの『骰子一擲』に重ねて、『骰子一擲 いかで偶然を破棄すべき』と呪文のように唱えてきた。w

しかし偶然は破棄できない。ただ、

 それを聖別するある終極点

                  に停止するまえに

             全思考は出発する骰子一擲

(ステファヌ・マラルメ:「骰子一擲」)

それは、双六でも人生ゲームでも、最大に運がよくて、一度に6つしか進めない、ってことだね。w

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