群衆ー札幌ビール園の晩餐群衆ー札幌ビール園の晩餐


群衆ー札幌ビール園の晩餐

午前5時15分起床。札幌はくもり。あたし達は昨日札幌に入り、夜は札幌ビール園で一献だった。

思い出すのは高村光太郎の「米久の晩餐」か。

ここは札幌ではあるけれど、札幌の人の割合は素晴らしく低く、日本全国から人が集うアジールだ。

その開放感からか、アジールと化したこの場はまさに群衆の喧噪。群衆、群衆、群衆、浅草でもこんな喧噪は見たことがない。

ぎっしり並べた鍋台の前を
この世で一番居心地のいい自分の巣にして
正直まっとうの食欲とおしゃべりとに今歓楽をつくす群衆
まるで魂の銭湯のように
自分の心を平気でまる裸にする群衆
かくしていたへんな隅々の暗さまですっかりさらけ出して
のみ、むさぼり、わめき、笑い、そしてたまには怒る群衆
人の世の内壁の無限の陰影に花咲かせて
せめて今夜は機嫌よく一ぱいきこしめす群衆
まっ黒になってはたらかねばならぬ明日を忘れて
年寄や若い女房に気前を見せてどんぶりの財布をはたく群衆
アマゾンに叱られて小さくなるしかもくりからもんもんの群衆、
出来立ての洋服を気にして四角にロオスをつつく群衆、
自分のかせいだ金のうまさをじっと噛みしめる群衆、
群衆、群衆、群衆。 

高村光太郎 「米久の晩餐」