とんかつ定食とんかつ定食


群衆

午前5時10分起床。浅草はくもり。この日は上野の「肉の大山」でランチにした。選んだのは「とんかつ定食」と、それから「ハムカツ」をお願いしたのだが、生憎と「ハムカツ」が出来ていないとのことなので、「やみつきメンチ」を貰った。普段ならこれにビールもお願いする処なのだが、この日はビールは呑まなかった。

「とんかつ」と聞いて、先に食べた「ゆたかのロースかつ」と比べてはいけない。この「とんかつ定食」は、値段は安いし、肉も固い。油も落ちるし、胸焼けもする。しかし、その全てを逆に楽しむ為にある(と思っている)。どんな愚痴を云おうが、これは「肉の大山」のものなのだ。

この店はちゃんと凄い! 押し寄せる人々の波を裁き、いつもと同じようにごはんを出す。この日の盛りはいつもよりも更に多い。その多い盛りを食べる人々。まさに高村光太郎が詩集『道程以後』の中の「米久の晩餐1で詠んだような「群集」が「肉の大山」に集まっているのだ。[上野・アメ横・御徒町グルメマップ]

やみつきメンチ

  1. ぎつしり並べた鍋台の前を
    この世でいちばん居心地のいい自分の巣にして
    正直まつたうの食慾とおしやべりとに今歓楽をつくす群衆、
    まるで魂の銭湯のやうに
    自分の心を平気でまる裸にする群衆、
    かくしてゐたへんな隅隅の暗さまですつかりさらけ出して
    のみ、むさぼり、わめき、笑ひ、そしてたまには怒る群衆、
    人の世の内壁の無限の陰影に花咲かせて
    せめて今夜は機嫌よく一ぱいきこしめす群衆、
    まつ黒になつてはたらかねばならぬ明日を忘れて
    年寄りやわかい女房に気前を見せてどんぶりの財布をはたく群衆、
    アマゾンに叱られて小さくなるしかもくりからもんもんの群衆、
    出来たての洋服を気にして四角にロオスをつつく群衆、
    自分でかせいだ金のうまさをぢつとかみしめる群衆、
    群衆、群衆、群衆。 (高村光太郎:「米久の晩餐」より)

肉の大山
東京都台東区上野6丁目13-2