おかめそばおかめそば


おかめそば

午前5時起床。浅草は晴れ。この日は「浅草角萬」でランチにした。寒い日で凍えながら引き戸を引いて中に入った。この処、夜に伺うことが多かったものだから、あの息詰まる程の出汁の香りがさほどでもなかった。あたしは入って左側の壁に向かって食べる処に座った。

そして「おかめそば」を温かいのでもらう。あたしはこの歳まで「おかめそば」をもらったことがない。なぜ、今までたのまなかったのか、と云えば、そもそもメニューになかったのが9割で、そして、あってもその前に食べたいものがあったのが1割である。

どうやったらおかめの顔にみえるのだろう

「浅草角萬」では、前々からメニューにあるのは知っていて、いつかたのんでやろう、と思っていたのだ。やがて「おかめそば」がテーブルにやってきた。あたしは具材の圧倒的な存在にただただ驚いた。圧倒的な蒲鉾の量である。そして、これどうやってみれば「おかめ」の顔に見えるんだ、と思った。

一つは三ツ葉を頭にしてみるという方法である。そうすると「なると」が目になる。「玉子焼き」は口だし、「焼麩」と「椎茸」、切り刻んだ「かまぼこ」は耳のようにも見える。そして、「かまぼこ」が白く広い額である。もう一つは全く逆だ。「玉子焼き」を頭部にして「なると」が目、そして、「かまぼこ」がほっぺたである。

あたしは後者を押したいのだが、姿はどっちもどっちだろう。しかし、この圧倒的な具材は、本当は酒の肴(酒肴)にあるのじゃないのか、とさえ思う。生憎と今日は昼餉である。また今度来たときには「おかめ」で酒を楽しんでみようと思ったのである。[浅草グルメ] [お蕎麦deランチ]

おかめそばとは、各種トッピングの具材を並べて「おかめ」という太り気味の日本女性の仮面の顔だちを描き出したソバ。一説には、「傍目八目(おかめはちもく:囲碁の勝負で客観的な立場の傍観者の方が対戦している本人より先を読めるということ)」のしゃれでトッピングが8種類のソバだともいわれる。おかめ蕎麦は幕末に上野七軒町にあった太田屋というソバ屋が始めたという情報があり(『蕎麦辞典』植原路郎著/東京堂出版)、それによると「岡場所」のひとつであった根津の遊郭に近いことと女性の顔であることをかけて「おかめ」としたというから、女性の「おかめ」説が正しいらしいが、「傍目八目」も後付けにしてはできすぎの解釈で捨てがたい。そこで用心深いソバ屋では、8種類の具材でおかめの面を表現しており(下図を見よ)、小うるさいソバ通の客の追及をかわしている。(CAS)

from 笑える国語辞典 「おかめ蕎麦」「おかめソバ」

浅草角萬
東京都台東区浅草4丁目45-4