禁煙12年
午前3時40分起床。浅草は雨。タバコは大好きだったのだ。そう脳梗塞で倒れるその時までタバコを燻らせていた。当時はそれでも減っていて1日2箱にしていたのだが、全盛期は1日5箱という、まるで機関車のような男だった。それが脳梗塞になった途端にぴたっと止めたのだ。
それは自分の意思とは関係なく無理やりに近いものだったが、それから12年間、タバコは1本も吸ってはいない。でも、時々吸いた気持ちになることもあるが、まあ、せっかく止めたのだからこのまま続けよう、と妙に健康意識が強くなっている自分に驚いたりもするのだ。
Café NIKI(カフェ ニキ)
そんな男が「 Café NIKI(カフェ ニキ)」に入ってみたのだ。「 Café NIKI(カフェ ニキ)」は「二木の菓子」の地下にある。入り口横に大きくはられた「喫煙目的店」、「全席喫煙可」が嫌でも目に入る。勿論20歳未満は入れない。そう、この店はなんと「喫煙目的店」であり非喫煙者お断りなのだ。
いや、今時なかなかハードな店だ。家人と一緒だったので(家人は喫煙者である)、まあ、いいか、と思った。それよりも、青く澄んだ空に揺らぐ「摩利支天徳大寺」の紫色の幟の中に見える「カフェ ニキ」の文字が、如何にも混沌としたアメ横を表していた。そうだよ、ここはアメ横なのだ。何があっても不思議ではない。
喫煙目的店・全席喫煙可の凄さ!
あたしは「アメリカンコーヒー」を、それと家人は「ワッフル」をお願いした。ただ、なにを食べたというようよりも、全ての環境が今のあたしの環境とは正反対の場所なのだ。それは驚きであり、12年前のあたしはがこうだったのか、と今更だけど非喫煙者の皆様に申し分けなく思ってしまった。
それはまずは匂いである。喫煙している部屋の匂いは強烈だ、確かに鼻が曲がる。そして煙だ、煙がなくてなにが「喫煙目的店」の店なのだ。煙が目に染みるとはこの事を云うのだな、と熟々と思う。さらには壁にこびりついているヤニの色よ。
そう云えば、浅草三丁目から引っ越してくるときに、当時大量のタバコを吸っていたあたしの部屋は茶色に変色していたのを想い出す。たぶん自分の肺の中もこんなものなのか、と思いながらも元気だった自分が懐かしい。
いや批判をしているのではない。ただ「喫煙目的店」は伊達じゃない。やるな、と思ったし、ある意味この環境にいる人達を尊敬もしてしまう。ただもう一度来てみるか、と聞かれれば「うーん」と考えてしまう。そしてそんなあたしの前で、流石は家人だ、ゆうゆうとタバコを燻らせていたのだよ(笑)。
Café NIKI(カフェ ニキ)
東京都台東区上野五丁目27 御徒町駅