大学芋大学芋


大学芋

午前5時20分起床。浅草は雨。三丁目の「千葉屋」の「大学芋」がテーブルの上のあった。「なんだこれは」、と聞くあたしに、「食べるのよ」と答える家人。「いや、そうではなくて、今日の夕餉のおかずがこれなのかと聞きたかった」、とあたし。そしたら「そうよ」答える家人。

「いや、ちょっと待て、あたしは糖尿病なんだぞ」その糖尿病の人間に糖分の固まりのようなモノを食べさせるのが、と一応念の為に聞くと、「違うわよ、全部あたしが食べるのよ」、と家人が云う。いや、なにを考えていることやら。「全部食べるだと」、とわざと大袈裟に驚いたのだ(笑)。

ビールの酒肴にしちゃいけません

「千葉屋」の「大学芋」は、浅草に住み始めた頃、マンションと同じ通り(言問通り)に面して並ぶ店の名物としてよく食べていた。あたしはこれが大好きで、ある日、ビールの酒肴にして食べてみた。最初はおいしいと箸も進んだのだが、ビールで腹が膨れて大変な目にあったことを想い出したていたのだ。

いや、とんだ笑いぐさなのだが、家人と笑い合っていた。しかし、「大学芋」が目の前にある、というのは「甘く危険な香り」が目の前にあることだろう。正に「忘れかけかけてた愛に香り」なのである。♫いちどは傷付いたはずの心で、信じ合えるにはあまりに悲しすぎる♫(「甘く危険な香り」 by 山下達郎)なのである。

今日は一欠片の10分の1をこそっともらい、その余りの「甘さ」に、目が潰れそうになる。(ウチでは、糖尿病のお陰で、目が危うく見えなくなるところだったので、そういう比喩を使うが、気に触る方がおられたら謝る)。この「大学芋」が今幾らで売られているかも知らないが、時々こうしてあたしの古い記憶を呼び起こしてくれるのだ。[浅草グルメ]

大学芋

千葉屋
東京都台東区浅草三丁目9-10