いしむしろの天ぷらそば いしむしろの天ぷらそば


国道49号線

午前4時55分起床。郡山はくもり。昨年末の事だ、あたし達は熱海温泉に向かっていたのだ。どう見ても雲の様子が変だと思いながら車に乗っていた。勿論あたしも家人も運転免許を持っているが、生憎と運転をここ20年程やっていなかったのである、つまり運転は家人の妹に任せきりなのだが、心配していた雪が案の定降ってきた。

場所は国道49号線のバイパスが始まる処である。あたし達はバイパスはパスして旧道を更に東へと向かう。目的の場所は「いしむしろそば熱海本店」だ。雪はますます降っている。家人の実家では「いしむしろそば 」に例年「年越し蕎麦」を頼んでいるのだ。普段は家まで持って来てくれるそうなのだが、2年程前から人出不足で配達ができなくなり、それで取りに出掛けているのだそうだ。

あたしはこれ幸いと一緒に出掛けたのである。そうこの「いしむしろ」で蕎麦を食べる為にだ(笑)。実を云えば、あたしはこの「いしむしろ」で蕎麦を食べるのは初めてでは無かった。福島に居るころ、何度かここの蕎麦を食べた記憶があった。その頃の「いしむしろ」は確かに旨かった(という記憶だけが残っている)。

あたしは浅草に出て来て二十余年。今では年間200食は蕎麦だという蕎麦食いである。そのあたしが、30年以上も前の己の舌をためそうと云うのである(笑)。「いしむしろ」に着くと義妹が蕎麦を貰ってくる。それから約15分間車の中で待っていた。雪はしんしんと降り積もる。これが2021年の終わりなのかと思う。

いしむしろ

11時になって店へ。引戸の中に暖簾が掛かり、もう一枚の引戸がある。店に中には大きなストーブがあり、そして広い店内に並ぶ机と椅子。それに小上がりも広い(それを小上がりと呼ぶのかだが(笑))。ただし、椅子は間引きしてあるようで、広々とした店内と合わせて、コロナ対策としては上出来かもしれない。

兎にも角にも温かい蕎麦を頼もうと、あたしら夫婦は「天ぷらそば」を、義妹は「地鶏南ばんそば」を「かけ麺」でもらう。そして待つこと30分(冗談じゃ無く本当に30分待ったのだよ!)、いよいよあたし達の蕎麦が出来上がったのだ。それは確りとした二八蕎麦が入った蕎麦丼と「天ぷら」の乗った皿だった。

まずは蕎麦丼から蕎麦を少し手繰った。あーこれが「いしむしろ」の「二八蕎麦」かと思い出したのだ。そして「天ぷら」の乗った皿から「海老天」と「キス天」を蕎麦丼に入れてみる。あー端から端まで「海老天」は伸びている。しかしその「海老天」も一匹だけだ(笑)。できればもう一匹欲しかったなぁと(笑)。

この店でしか食べられない味と香り

そして何時ものように食うのである。塩が小皿に着いて来て「天ぷら用」です、とおばさんが教えてくれたが、この「天ぷらそば」に塩など使うところは無い(と思う)のだ(笑)。「かぼちゃ」と「ピーマン」の「天ぷら」をあたしはそのまま食べた。おいしかった。そして「天ぷら」の衣がふにゃふにゃになった処で汁を啜った。

あー旨い。大量に使っているだろう醤油の香りが漂っている。それは個々の蕎麦では絶対に分からないだろう。そう、この店全体に漂う香りなのだ。これは何処かでかいだ匂いなのだがその正体はわからない。でも、どこかの古い農家でかいだ匂いのような気がした。たぶんこの店に住み着いた醤油の精が醸し出すものなのだろう。

だからこの店で食べる「天ぷらそば」は、この店でしか出せない香りと味がしたのだ。それは決して浅草の蕎麦も敵わない味と香りということができる。そして夜食べた「いしむしろ」の蕎麦は香りが違っていた。同じ蕎麦を茹で、ペットボトルに入った蕎麦汁を分けてもらったが、ここまで違うものとは思わなかった。いや、「いしむしろ」素晴らしかったよ。[お蕎麦deランチ]

いしむしろの天ぷらそば

地鶏南ばんそば

いしむしろ店内

IMG_20211231_110956

いしむしろそば 熱海本店
福島県郡山市熱海町熱海3丁目48